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平屋なら当然不要ですが、2階以上なら必ず必要になってきます。 なん
てことなく、ほとんどの住宅についているものですが、ちょっと見方を変えるだけで、日常の中で非常に非日常に化ける建築空間でもあります。 何故、非日常
に化けるんでしょうか? 上階に登る,,あるいは地下に潜るの..それ自体がワクワク感を刺激するのだと思います。 それは、映画・演劇等においてもよく
見ると盛んに出てきます。映画なら、「風と共に去りぬ」
のラストシーン..「ローマの休日」のスペイン広
場....日本なら「蒲田行進曲」の新撰組の池田
屋の大階段シーンですか。 宝塚歌劇にも必ず大階段のパ
レードが出てきますよね。 それくらい、映像的にも魅力があるのだと思われます。日常における最も
非日常空間でしょうか。 いったい、こんなの誰が発明したのでしょうか。といっても、世界中のどんなに古い遺跡にも見られます。 階段平面を簡単に分けるとざっと図のようになるでしょうか。 もちろん、これは飽くま で簡単な種類分けと考えてください。個々のプラン等によって、特殊な形状になるものはいくらでもあります。 よく住宅で見るのは、A、B、C、Eあたりでしょうか。 プランの制約でDのような直階段も時々見かけます。Fのらせん階段はかなり見なくなりました。吹 抜けのリビングに見せる階段として取付けるくらいでしょうか。意外と扱いにくい部分はあります。A、B、C、Eの階段は俗にイッテコイとも言います。形を みればいわれはおわかりだと思います。 プラン的にも効率よく廊下等への接続がいいのでこのような形状が多い訳です。Dの直階段だと片側に同じ長さ以上の 廊下がないと接続しません。 らせんはそういう意味での効率はいいのですが、段の巾が内側と外側でだいぶ変わるのと、身体の向きが常に変わる..等で特に 避難の時には方向が掴みにくくなります。 福祉住環境のテキストなどだと使い勝手からはオススメはA>B>C、DとなりEは×です。らせんは載ってません。避難や登るときをイメージしていただけれ ば想像出来ると思います。 Aはもし降りる時に転げ落ちたとしても、踊り場で身体を受けてくれるので、そこで止まります。B、Cも同様ですが、踊り場に段 があるのでその分Aより危ない訳です。では何故B>Cなのかといえば、Bの方が踊り場が方向転換毎に使えるようになっているが、Cはどうしても段の上で方 向転換するので、そのあたりはCのほうが分が悪いという事です。Dも見ただけでもわかるように、転げ落ちたら下まで行きかねません。Eは方向転換180° を全て回りながらやる事になるので、分が悪いのです。らせんも同様で、さらに方向性もわかりにくくなります。 個人的にはAの階段で踊り場でも完全にフラットにして、ゆったりと踏面、蹴上げを確保したいと思ってますが、どうしても納まりの関係でC、Eにならざるを 得ない時もあります。 こういう回り部分は施工の納まり的にもよくならないし、まして清掃する時には困りもんなのがほとんどです。なんとかして無くしたい のですが...。 階段の断面は、上図のように踏面(ふみづら)、蹴上げ(けあげ)、蹴込み(けこみ)、段鼻(だんばな)等で構成さ れます。時々、右図のような蹴込み無しの階段を見かけますが、個人的にはあまり賛同できません。このすきまに足を滑らせたりしたらどうするのでしょうか。 ぶつけた程度ならいいのですが、引っ掛けて転げ落ちる事も考えられないでしょうか。開放性を求めて蹴込みをなくすのでしょうが、小さい土手を作る、メッ シュで塞ぐ、ポリカのような透明版を取付ける...等いろいろ方策は考えられると思います。 また、段鼻から手摺までの高さは、住宅の内部階段のような場 合には750〜800ミリ前後が多いようです。 外部階段で5,6階建ての雑居ビルのような場合には躊躇なく1,100 ミリ以上の高さをとり、間は手摺子、桟等 で落下防止に努めます。 かつて、担当者時 代に9階建てのマンションの外部階段で斜め部分で手摺高さ950ミリ程度とした事がありました。 確認申請も、検査も問題なかったのですが、後日公団から クレームが出ました。その時は段鼻から1,100ミリの高さをカバー出来るように手摺を上に追加する事で、落着しました。法的にはこの斜め部 分については1,100とは規定がない..等を聞いた事もありますが、以後は斜め部分、踊り場のいずれでも外部階段の場合には1,100を守るようにして ます。 戸建て住宅や小さいビルの時にはあまり影響ないのですが、階数が多くなって来るとそれ に応じて、階段の耐火、避難性能が要求されてきます。5階以上の階または地下階以下の階に接続するような場合には避難階段に、15階以上の階または地下3階以下に接続するような場 合には特別避難階段としなければなりません。5,6階建 ての分譲マンションで外廊下に接続する階段は屋外避難階段と いいます。これらの階段は名前が示す通り避難し易く作らていなければならないでしょう。50階の超高層ビルでもエレベーターがストップして外に避難すると いう事になれば階段で降りるしかないのです。しかも、大きなビルになればそこへの人の集中度合いも並みではないでしょう。 2001年の同時多発テロの時には階段での避難に相当な時間がかかったようです。 自分が、いくつか見てきた建築で印象に残った階段といえば、現・目黒区 役所(旧千代田生命)のエントランスホールの階段、パレ スサイドビルの中央廊下と地 下を結ぶいわゆる「夢の階段」、グランドプリンスホテル新高輪の「飛天」への入口辺お階段...。 まだ、行ってませんが、イラク・サマッラのマルウィヤ・ミナレット(カ リフ・アル・ムタワッキル)の塔のらせん階段を昇ってみたいものです。 シドニーオペラハウスなどはギリシャの神殿 のような見事な階段でした。見事なのは、それがそのまま避難階段として考えられているところでしょうか。不特定多数の集まるオペラハウスの性質をよく理解 していて、しかもさり気ない作り方で本当に素晴らしいと思いました。 バブルの頃(1990年前後.)だったと思 いますが、海外有名建築家設計の物件が相次いで首都圏で竣工しました。当時の事務所の先輩・同僚らと新建築に載ると場所を探してよく見歩いてましたが、そ の中に新宿歌舞伎町のプロジェクトがありました。用途的 には、雑居ビルかと思いますが、セキュリティは当然かかっているのですが..まあ、そこは業界人の知恵であまり入れない14,5階あたりまで行ってしまい ました。 上階から降りながら共用部をみて行くつもりだったのですが、その時の外部階段の作り方がとても怖かったです。 勝手にはいったので文句言え ませんが、いわゆる腰壁というものが立ち上がってなく、ワイヤーと竪のフラット・バーの構成でした。 降りる時には踊り場まで、外に飛び込むような錯覚を覚えました。私も高いところは得意じゃないのですが、高所恐怖症というほどではないと思います。でも、 その時にはあまりの開放性に恐怖を覚えました。直径数ミリのテンション・ワイヤーの横桟..足元から全て外が見えてしまいます..。 何かあった時に、こ ういう階段で避難するのって怖過ぎじゃないか?? とても、疑問でした。 デザイン的には当時、そういうテンション・グリッパーとでもいうのでしょうか..流行ってました から。 もう、ひとつ気になるのはその細さですね。もし、逃げる途中で握ってしまったら、けがする確率が高いのではないか・・? と思いました。皮膚の表 面が切れてしまうような気がして..。 ホントにスタイリッシュではありましたが、違う意味で考えさせられました。 世界でも超一流の建築家の日本でのプ ロジェクトという事でもてはやされてましたけどね。 自分の目で見て、考える事の大切さを痛感しました。 ※マルウィヤ・ミナレット---私が学生の頃にはカリフ・アル・ムタワッキルの塔と覚えてました。いまは、こ 名称のようです。シンプルでシンボリックで形状的にはバベルの塔を彷彿とさせます。 現・ 目黒区役所(旧千代田生命)---村野藤吾設計のほんとに素晴らしい建築です。 あの静謐さが何とも言えませ ん。こういう建築を区役所として再生利用している目黒区も見識がある素晴らしい自治体だと思います。 パ レスサイドビル---日建設計の林昌二の名作ですね。 同じ敷地に建っていた建築学会賞をとった リーダイズ・ダイジェストビルを解体してそこに建てるのですから、設計者はじめこのプロジェクトに関わった人のプレッシャーは並大抵ではなかったと思いま す。BCS賞等をとっています。現在はDocomomoによる建築20選に選ばれています。 シ ドニーオペラハウス-- -階段も素晴らしいですが、その造型、作る技術等は何もいえないくらい感動ものです。まさに20世紀を代表する建築だと思います。 ※パレスサイドビルの説明に建築学会作品賞受賞の記載がありましたが、誤りでした。説明文は訂正済です。(2013.9.18) |
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