3 空間をイメージする
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2013.7    
設計のプロならば、少なくともスケッチをかいたり図面をかいてる時に必 ず出来上がる空間をイメージできると思うのですが、時々本当に解っててこんな解決方 法をえらんだのかな?と思える建築をみることがあります。

●家具がいれられない:玄関の位置、向き、などで思わぬ家具が搬入できないなんてこともあります。

●いきなり配管:収納を開けてみると、上部を配管がいきなり横切っていた。それも露出で..。
 
●ぶつかるドア:片開きのドアが直角に向き合っているのに同じ向きに開くので同時にひらくとぶつかる。

●低すぎる梁下:壁をせなかに家具を置くつもりだったのに、梁下が低すぎて背中をあけておかないと、置けない。

上に書いたような事は、わりとありますね。図面を書いてる時に階段の高さをイメージして、その下がどのくらい有効に使えるのか、頭のなかで想像して ちょっと計算してみれば充分わかることです。初期のプレゼン用の図面などみてるとスッキリしていてきれいなのですが、恐ろしいくらい床がうすいとか、柱、 梁が異様に小さいとか、本当にこんなので出来るなんて説明したのかな?..と思えるのもあります。まあ、仕事とるには見栄えも大事だと思 いますが、過ぎたプレゼンはいただけないですね。誤解のもとだと思います。これこそペーパー商法ってやつですね。



設計は創造行為だといわれますが、創造するには設計者がきちっと何が出来上がるのか、どんな空間になるのかきちんとできてないと創造行為に至りませ ん。クリエイティブも大事ですがイメージする事も大事です。いろいろな状況・方法などを選択した場合の空間を想像できなければ検討も何もできないでしょ う。ひらめきが創造につながるなら、想像するということはそれを検証するという事につながっていくのではないでしょうか。ひらめきは一瞬かもしれません が、それを検証するには何度も繰返し想像してみる事になります。



渡邊洋 治 の作品集 の中で第3スカイビルの図面をみましたが、とにかく微に入り細に入り、事細かに書かれていて、おまけに外壁ユニットの パースま であって、ど んなふうに何をつくればいいのか、とても解り易くかいてありました。図面を書く(製図)ことに集中しているのではなく、設計している事を図面に翻訳してい るのだ、というような姿勢なんでしょうか。とにかく、圧倒的でした。図面化しているときにはきっと頭の中で建築はできあがっているのでしょう。そして書き 上げる程に、さらに細かいところまでみえてきたのに違いありません。線を引く時には、頭の中で何度も、何本も引いているのでしょう。そして、ベストと思わ れる線を何度もイメージして、紙の上に落としていく。その繰り返しなのでしょう。
なるほどと思い、まだかけ出しだった頃、真似をしてキッチンの吊戸棚の詳細図をアクソメで書いたら、現場監理していた先輩が現場所長にあの図面、訳解んな いです、と言われたそうで..。やはり、何でもやみくもに書けばいいってもんじゃないですね。笑われてしまいました。



最近読んだ吉村順三著の『小さな森の家』の始めの方の頁にこんな風に書いてありました。
『..屋根は、山全体の形に馴染むように、手前に下がった片流れにしている。もし、それが逆になると、どうも地形に素直でないような気がしてね。ぼくはい つも、建物のかたちと地形を切離さずに考えているんだよ。』

山荘の向きをどうすればどのようにみえるだろうか。屋根の形を切妻にしたらどうみえるのだろうか。そんな時にどのように決めていたのかが、よくわかる言葉 だと思います。この言葉の裏に、いかに図面作製の段階で配置、屋根の見え方、山荘にアプローチしたときの見え方をイメージしていたかという事がよみとれま すね。その辺がもっと簡単にこの形でこの向きでいいやと決まっていたとしたら、果たしてあのような作品にまでなったのでしょうか。

※『小さな森の家』-軽井沢山荘物語-  
建築資料研究社  
小さな森の家副題にもあるようにどちらかといえば素人向けに解説したような趣の本。詳細図などもありますが、写真からは山荘が四季の中でどのよう に使われているのか、 気配が伝わってくるようです。本の装丁もかっこいいです。
 
 
 
 
 

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